大判例

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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)6385号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔争点〕原告は昭和三七年六月六日その所有の本件家屋のうち三室を被告に対し、期間二年間、賃料一カ月二万円と定めて賃貸した。原告は、右賃貸借は原告が結婚するまでの暫定的期間に限つて二年間としたのであり、一時使用を目的とするものであつたから、期間満了により終了した、然らずとしても、原告は正当事由のある更新拒絶の意思表示をしたから、本件賃貸借は昭和三九年六月五日をもつて終了したと主張して、被告に対し賃貸部分の明渡しを求めた。右の本件賃貸借が一時使用を目的としたか否かの点について、判決は次のような判断基準を掲げてこれを否定した。

〔判決理由〕「一般的にいつて、借家法第八条に定める『一時使用の為建物の賃貸借を為したること明らかなる場合』といいうるためには、賃貸借契約の動機、趣旨、家屋の種類、構造、利用の目的、形態などの客観的事情から賃貸借を短期間に限つて存続させることが合理的であると客観的に判断できる場合か、又は右のような客観的判断が必ずしも明確にできないときでも合理的な範囲内で賃貸借の存続期間を特に一定の短期間に限定する理由が当事者間において了解され、賃借人がこれを承認している場合でなければならないものと考える。

本件についてみると、成立に争いない甲第一号証によれば本件建物は通常の居住用建物であることが認められ、当事者間に争いない事実である賃料の額、支払方法も特に通常の借家契約の場合と異なるところはなく、本件賃貸部分の利用目的も当事者間において居宅用か、居宅兼事務所用か争いはあるが、いずれにしても本件賃貸借が一時使用のためであると判断できるような特異性はない。また、当事者間に争いないように本件賃貸借の存続期間は二年間であるが、一時使用を目的としない借家契約においても賃貸期間を二年間程度に限定することは通常行われるところであり(かような期間についての合意がどのような意義を有するかは別として)、成立に争いない乙第一号証、証人杉浦晴一郎の証言、被告本人尋問の結果によれば、被告は原告に対しいわゆる権利金は支払つていないが敷金として二〇万円を交付した事実を認めることができるが、敷金の額が大きいことを考え合わせると特に異とするに足りない。なお原告主張のように、本件賃貸借契約を締結するにいたつた動機ないし主観的意図が、原告の結婚するまで特に二年間という一定期間を限つて賃貸借を存続させようとするものであつたとしても、原告本人尋問の結果によれば、本件賃貸借契約締結当時原告の結婚は何ら具体化していなかつたことが認められるのであつて、原告の結婚は賃貸人である原告の意思にのみかかつている事情であり、その時期も非常に不明確で、右のような原告の主観的意思があつたからといつて、本件賃貸借が直ちに客観的に一時使用を目的とするものであると断定することはできない。そこで次に、前記のような原告の本件賃貸借にいたる動機ないし主観的意図が賃借人たる被告に了解され、被告はそれを承認していたか否かについて判断するに、原告の前記事情を被告も了解した旨の主張に沿う証人杉浦晴一郎の証言および原告本人尋問の結果は、乙第一号証(本件賃貸借契約書)には本件賃貸借契約が特に一時使用を目的とするものである旨の合意がなされたことを窺わせるに足る記載はない事実および証人長田正善の証言および被告本人尋問の結果に照らしてにわかに信用できないし、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。従つて本件賃貸借が明らかに一時使用のためになされたものであるという原告の主張は、これを認めることができない」(定塚孝司)

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